保険業界で進むai開発や導入にはどのような動きがあるのでしょうか?ここでは、実際に保険関連企業で導入されているaiの成功事例を取り上げて紹介しています。
一般的に保険金請求は紙ベースでおこなわれ、その内容を精査し支払う保険金額の算定と支払可否を判断します。間違いが許されない細心の注意が必要な業務なだけに、かかる人件費や時間が大きくとられていました。
そこで、読み取り技術を活用し読み取り作業をオートメーション化。社内の統一コードに変換し、画像識別でどのコードに該当するのかわかればいいようにしました。テキスト化が不要なので、読み取り制度や表現の揺らぎなどの問題も発生しません。
申込書に記載されている手書き文字の読み取りを行ったところ、約80%と高い精度で正しいコードへの置き換えができました。保険金に関わることなので、業務すべてを完全オートメーション化するには厳しい数値ですが、該当項目を探したり入力作業などの手間が減りました。
対応内容 | 画像認識・手書きOCR |
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開発企業 | 株式会社 Laboro.AI |
証券会社では国内外の債券から投資信託、仕組債と幅広い商品を取り扱っており、顧客のリスク許容度や売買回数・金額、株式保持期など状況が違います。顧客へのアプローチの効率化と優良顧客との繋がり、顧客体験の拡大を目的に、過去の購買実績や閲覧実績から購買確率モデルを構築し、期待販売金額のリストを作成。
期待販売金額の高い顧客から購入しやすそうな商品でアプローチできるので、限られたスタッフでの効果的な商品の提示・提供を可能にしています。とはいえ、ただ単に金額の高い順からアプローチしているのではなく、顧客の購買傾向を可視化し、顧客の趣味・嗜好に合わせた商品が提案できるようにしています。
対応内容 | 購買予測・需要予測・マッチング・レコメンド機能 |
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開発企業 | 株式会社ブレインパッド |
Accenture(旧Albert)が自動車保険の特約サービスとして貸与しているドライブレコーダー端末が強い衝撃を検知すると、端末から事故対応のオペレーターに連絡。録画された事故映像が送信されます。合わせて、加速度センサーやGPSから事故状況をAIが解析。
この事故状況再現システムの導入で、事故状況を自動的に再現し、事故の形態、車両の損傷箇所、道路形態などの情報が得られ、AIが算出した責任割合の自動算出をいち早く確認できるようになりました。事故のスピーディーな解決と保険金支払いを可能にしています。また、解析結果は案内資料として渡しているので、関係者各位への自己説明のサポートツールとして活用できます。
対応内容 | 画像認識・異常検知 |
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開発企業 | Accenture(旧Albert) |
株式会社PKSHA Technologyの独自アルゴリズムを活用し、生命保険・損害保険一体の推奨プランを提案できるシステムを開発。東京海上日動の保険代理店で「超保険」を提案する際に、PKSHAのアルゴリズムが顧客のニーズを学習し保険の最適化を提案します。
これまで蓄積してきた契約情報を分析し、その結果からAIが顧客の状況やニーズにあった補償・保険金額を選定し、一人一人にあった保険プランを設計。補償ごとに「おすすめ度」を数値してくれるので、他のおすすめプランとも容易に比較できます。
保険スタッフは保険プランに適宜調整を加えて提案するだけでなので、プラン作成の業務負担を軽減し、顧客のニーズをくみ取ったサービスを可能にします。
対応内容 | 購買予測・需要予測・マッチング・レコメンド機能 |
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開発企業 | 株式会社PKSHA Technology |
サイトの「よくあるご質問」ページに、バーチャルナビゲーションシステム「日々乃(ひびの)まもり」を導入。口語体で入力された質問文章を解析し、DNPのコンシェルジュシステム「Faceコンシェル」によりWEBサイト内の情報に合わせた回答や、必要な情報ページへの誘導を可能にしています。
趣味など関係ない質問をすると「日々乃まもり」の表情が変わるなど、ユニークな仕掛けも。使用できるデバイスはパソコンだけでなくタブレット端末やスマホでもでき、一部の端末では音声での質問にも対応しています。
「日々乃まもり」を導入することでコールセンターの負担を軽減し、利用客の待ち時間短縮にも。また、質問の記録から顧客データの分析ができ、FAQの充実や商品の開発に活用されています。
対応内容 | 自然言語処理 |
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開発企業 | 株式会社インテリジェント ウェイブ |
第一生命保険株式会社と富士通株式会社は、AIがお客さまの意向に基づいて保障プランを提示する「AI保障設計レコメンドシステム」を開発しています。こちらのシステムは、2020年4月より全国展開が行われています。
こちらのシステムは、第一生命の生涯設計デザイナーにより過去作成された1,700万件の保障設計データをAIによって機械学習が行われています。加入中の契約情報に加えてお客さまが重視する保障内容や予算などの意向に基づいて、保障プランを自動作成。AIの提案をアシストすることによりコンサルティングの高度化と品質の均一化を可能にするとともに、複数プランの提示が可能となることから顧客満足度の向上につなげることができます。
対応内容 | 需要予測 |
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開発企業 | 第一生命保険株式会社、富士通株式会社 |
SBI生命保険株式会社は、2021年10月よりAI電話自動応答システム「MOBI VOICE(モビボイス®)」を導入しており、RPAと連携することによって生命保険料控除証明書の発行手続きにおいて受付から処理完了まで完全自動化しています。
もともと、年末調整や確定申告前は生命保険料控除証明書に関する問い合わせが増加しており、オペレーターの負荷が大きくなっている状況でした。しかしシステムを導入することによって24時間365日生命保険料控除証明書の再発行受付が可能になったことで、オペレーターの負荷を軽減。繁忙期の増員人数や研修時間削減を実現できたとともに、受付から発送にかかる時間が短縮されたことで、苦情や不満がゼロになったという効果も得られています。
対応内容 | 業務効率化 |
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開発企業 | モビルス株式会社 |
アイデアベースではよさそうにみえたプロジェクトでも、現場の課題に対応していないと失敗しやすいです。しっかりとゴールを決めないでプロジェクトを始めると、担当者とシステムの開発会社とで認識が異なるまま進んでしまい、PoCを作った後に認識の違いが明らかになるなど、「PoC死」を招く事もあります。
保険業界では、契約審査や引受判断の部分にてAIを活用しています。顧客の健康状態や過去の病歴についてAIが分析を実施し、リスクの評価や保険引受に関する可否の判断などを行うことにより、保険申込時の審査時間の短縮と人的なミスの軽減につなげています。
また、カスタマーサポートの部分では、AIチャットボットによる対応が可能。24時間365日契約内容の紹介ができるほか、FAQや見積り対応などを自動化することで、顧客満足度を向上させるとともに、業務効率化にも寄与しています。
AI導入によるメリットとしては、業務の効率化やコストの削減、顧客満足度の向上といった点が挙げられます。これまで人の手で行っていた契約審査や顧客対応をAIが担当することによって、人的コストと時間を大幅に削減可能となります。
またAIを活用することで、加入中の契約情報や顧客のニーズ、保険料の予算などの意向に基づき、保証プランの自動作成もでき、ひとりひとりの意向に沿った補償プランの提案が可能になります。
AIを活用したシステムを導入した際に、現場の業務とフィットしないものを導入してしまうと、現場からの反発が発生する、システムが使われないまま時間だけが経過してしまう、という可能性もあります。また、さまざまな個人情報を扱うことから、個人情報保護・サイバーセキュリティ対策は必須であるといえます。
AIを活用するためには、まずどのような業務課題をAIで解決したいのかを明確にすることが必要になります。この時、現場からの意見にもしっかりと耳を傾けてプロジェクトを進めていくことが大切です。その後、導入段階に進んだ場合には、まずは小規模の導入からスタートし、十分な検証を行った上で、全社的な展開を行うといったように、段階を踏みながら導入を進めていくことが非常に重要であるといえます。
保険業界では、契約審査や引受、請求処理、顧客対応などさまざまな場面でAIが活用されています。AIの導入にあたり、成功の鍵はまず「目的の明確化」と「段階的導入」を行うことです。導入目的を明確にし、現場と経営層の合意を形成した上でAIの導入プロジェクトを進めていくことが非常に大切であるといえます。
また導入後は、短期的な数字のみでの評価はせずに、長い期間をかけてさまざまな観点から効果を検証していくことも重要なポイントとなります。
保険業界におけるAI活用では、不正請求の探知、事故状況の自動生成、生損保一体プランを設計、問い合わせ対応など、保険業務を効率化してくれます。ただ、目的を明確にして導入しないと、状況を改善できないばかりではなくコストも高くついてしまいます。また、使いこなせる人材がいないと「負の遺産」と化してしまう可能性もあるので、全員が正しく使用できるような研修やマニュアルを用意する必要があります。
AI受託開発を成功させるには、ベンダーとの密なコミュニケーションが必須となります。TOPページでは企業の課題解決に向き合う人材やサポート体制に力を入れているベンダーをピックアップしていますので、是非比較・検討の参考にされてみてください。