本記事では、AI画像認識を用いた植物の判定(同定)システムについて解説します。
植物の同定作業は、生物学的研究や環境保護、農業、医療などの分野で欠かせない役割を果たしています。植物の生態系における役割や環境応答を理解するためには、どの植物種がどの環境に生息しているのかを把握するなど、正確な同定が不可欠です。AIによる画像認識技術を使うことで、植物の種名の高精度な判定が期待できます。
AIによる植物同定にはいくつかの課題があります。一つは、標本画像の状態が判定に大きな影響を与える点です。葉が欠けていたり、虫食いの穴が多い標本があると、判定の成功率が低くなる恐れがあります。不完全な標本を学習データから取り除くことで、AIの判定精度を向上させることが求められます。また、専門家が間違えてしまう植物の同定は、AIも間違えやすいというデータがあるため、AIが解析に用いる画像データの要素を見直すことが必要です。
大学や博物館の植物標本をデジタル化、AI画像認識システムに学習させ種別を推定します。正答率は2,171分類群において96.4%と 高く、誤同定した標本を選び出すこともできます。今後は標本ではなく、実際の植物の写真を判定するシステム構築を目指しています。
参照元:鹿児島大学「【博物館】AI画像認識システムを用いた植物の種名判定システムを開発」(https://www.kagoshima-u.ac.jp/topics/2022/06/post-1929.html)
WEBアプリ「GreenSnap」に搭載された「教えてカメラ」は、植物の画像を撮影すると、AIが名前を教えてくれます。AIだけでなく、GreenSnapのユーザーが教えてくれる点が特徴です。現在対応している品種では、90%以上の正解率 を上げています。
参照元:TRIPLEEIZE「植物・花の名前をAIが判定」(https://www.3-ize.jp/case/casestudy/3490/)
AIを活用して植物の野外画像解析システムを独自に開発し、植物が環境の変化に適応する反応や仕組みを解析できる手段を確立しました。タチスズシロソウ等、植物の画像データを400万枚以上収集し、解析を実施。その結果、種間交雑に由来する植物がさまざまな環境へ適応する頑健性の示し方が明らかになりました。低コストで運用でき、今後は作物への応用も検討されています。
参照元:横浜市立大学「画像解析AIを利用して植物の環境応答解析システムを開発~牧野富太郎の命名した植物の頑健性を解明~」(https://www.yokohama-cu.ac.jp/res-portal/news/2023/20230921shimizu.html)
人工知能花認識システム「ハナノナ」は、ディープラーニングで学習した人工知能が花の種類を自動で分類するアプリです。現在792種類の花 を認識できます(2025年4月現在)。スマートフォンで利用する場合、カメラ撮影し簡単に画像認識できます。
参照元:千葉工業大学 人工知能・ソフトウェア技術研究センター(https://flowers.stair.center/ja/)
AIによる植物判定システムは多くの大学や研究機関で開発が進んでいます。課題はありますが、研究が進み解析精度が上がれば、今後さらなる精度向上が見込め活用の幅が広がります。
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