監視カメラの映像をAIがリアルタイムで解析し、不審者や「徘徊」「異常な滞留」といった危険な兆候を自動検知する技術が、安全管理や防犯の分野で急速に普及しています。
本記事では、AIによる不審者・不審行動検知がどのように活用されているのか、国内外の最新事例から導入メリット、AIの精度を高めるために必要なデータ、開発成功のポイントまでを網羅的に解説します。
ロンドン交通局(TfL)は、既存の監視カメラ(CCTV)映像をAIで解析し、異常行動をリアルタイムで検知する実証実験を行いました。「武器の所持」や「線路への転落」、「不払い乗車」など11種類の行動パターンを定義し、異常を検知した際は現場スタッフへ即時通知する仕組みです。
この取り組みにより、従来の人力による監視体制を補完し、異常事態の早期発見と対応速度の向上を目指しました。一方で、武器所持など特定の行動に対する検知精度や、誤検知への対応、公共空間における監視強化の倫理的な側面が課題として残されています。
参照元:WIRED公式サイト(https://www.wired.com/story/london-underground-ai-surveillance-documents/)
国内外のITベンダーは、AI行動分析と地理空間データを組み合わせた高度な警備ソリューションを開発しています。100種類以上の動作データを学習したAIが、施設内における「長時間の滞留」「徘徊」「不自然な移動」などを自動で検出します。
検知した異常は位置情報と連動して地図上に可視化され、警備員の効率的な対応を支援します。リゾート施設などでの実証が進んでいますが、多様な行動パターンに対応し、広域エリアの警備運用を効率化する技術として注目されています。導入には、施設ごとの「不審」の定義付けや誤検知対応など、綿密な運用設計が求められます。
参照元:Fujitsu公式サイト(https://global.fujitsu/en-global/pr/news/2025/10/08-01)
人間の監視員が24時間体制で複数のモニターを注視し続けるには限界があり、疲労や注意散漫による見落としリスクが伴います。AIは疲れを知らず、常時映像を解析し続けることができます。
「侵入」「異常な滞留」「人の流れの急変」など、通常とは異なる行動パターンを即座に捉え、重大なインシデントが発生する前兆を検知しアラートを発報。これにより、問題が大きくなる前の「予防的な対応」が可能となり、施設の安全性を高めます。
AIが異常パターンを自動で検知し通知することで、監視員はアラートが発生した箇所を重点的に確認する体制を組むことができます。常時監視の負担が軽減されるため、より効率的な人員配置と運用が実現し、監視業務のコスト最適化に繋がります。
また、既存の監視カメラシステムにAI機能を追加する形で導入できるソリューションも多く、物理的な設備を大幅に更新することなく監視能力の向上が見込めます。
AIによる行動解析は、「このエリアでは特定の時間帯に滞留が発生しやすい」「この導線では不審な徘徊行動が見られる」といった、異常行動のパターンや傾向をデータとして蓄積・分析することを可能にします。
単なるリアルタイム検知に留まらず、長期的なデータ分析に基づき、「何が起きやすいか」を予測し、警備配置の見直しや施設レイアウトの改善といった、よりデータドリブンな安全管理・運用改善に役立てることができます。
高精度な不審行動検知AIを構築するには、まず「映像データ」が不可欠です。人や物の動き、滞留、接近などを捉えられるよう、適切な画角・画質・フレームレートで撮影された監視カメラ映像が必要となります。
次に重要なのが「注釈ラベルデータ(アノテーション)」です。映像に対し、「この人物が何秒間滞留した」「この物体が放置された」といった行動の意味付けを行うラベルデータが、AIの教師データとなります。さらに、「正常行動データ」も大量に必要です。AIは「通常の状態」を学習し、そこから逸脱するものを「異常」として検知するため、平常時の多様な行動パターンを網羅したデータがモデルの基盤となります。
データの品質と多様性が、AIの精度を大きく左右します。例えば、昼と夜、晴天と雨天、混雑時と閑散時など、実運用で想定される多様な環境条件やカメラ視点のデータをバランスよく収集することが重要です。
また、「滞留とは何分以上の停止を指すか」といった行動の定義を明確にし、一貫した基準でラベリング(アノテーション)を行う必要があります。運用開始後も、AIが誤検知したケースや見逃したケースを収集し、継続的にモデルを再学習させるフィードバックループを構築することが、実用的な精度を維持・向上させる鍵となります。
最も重要な留意点の一つが、プライバシーと個人情報の保護です。監視カメラ映像には個人の顔や行動が詳細に記録されるため、データの収集・保存・利用に関しては、匿名化処理を施す、アクセス制御を徹底するなど、法令やガイドラインを遵守した厳格な管理体制が求められます。
また、「何をもって不審行動とするか」という定義は、施設や文化によっても異なります。導入前に「検知すべき異常」を明確に定義し、関係者間で合意形成を図っておくことが、開発の手戻りや運用時の混乱を防ぐために不可欠です。
不審者・不審行動検知AIの開発を成功させるには、まず「どのような異常事態を防ぎたいのか」「AIに何を検知させるのか」という目的と定義を明確にすることが最も重要です。公共の安全のためか、特定の施設内での万引き防止かによって、必要なAIの機能や精度は全く異なります。
不審者検知・不審行動検知AIの開発を成功させるには、導入前はもちろん、導入したあとも密にコミュニケーションを取れるベンダーに依頼するのがおすすめです。このサイトでは企業の課題解決に向き合う人材やサポート体制に力を入れているベンダーを紹介していますので、是非ご参照ください。